20180225 マンハント@MOVIXさいたま

まず最初に、これだけは断っておく。
「こまけーことはいーんだよー」(,,゚Д゚)

いや、冒頭は「こりゃヤバいかも」と思った。悪い意味で。
いや、BGMにど演歌流れているわ、舞台がいかにもな田舎の居酒屋だわ、女性二人も和服はちゃんと着こなしてるけど日本語はたどたどしいわ。
でも、そこでの銃撃戦から一気にヒートアップして、そのたどたどしい日本語もあえての演出で。

そして、ものすごいカット割りで、複数のストーリーを並行して説明していく。一番のメインストーリーは、日本の天神製薬の国際弁護士だった中国人主人公が殺人の罪を着せられて大阪の街を逃亡しながら謎を解明し復讐に燃えるというもの。そして、その主人公を追いかける、まるでドーベルマン刑事みたいな破天荒な刑事役が福山雅治。二人が、時には戦い、時には協力し合う。で、二丁拳銃(時には二人が手を手錠で繋がれた状態での二丁拳銃)がでてきて、野外だけど教会も出てきて、ちゃんと鳩も登場するという、まさにジョン・ウー節が満載のアクション作品。
そして、敵味方が複雑に交錯しているのが徐々に整理されていき、最後の決戦に至る。で、これ、たった2時間の作品なのよ。なので、今時の作品にしては説明が足りなかったり、時系列が不明瞭に前後していたりして、ちょいと見る側で脳内補正をする必要のある部分もある。

だけど。
「こまけーことはいーんだよー」(,,゚Д゚)

まず。今の大阪を舞台にして最大限に生かしたアクション。
「ブラックレイン」では、リドリー・スコットは大阪の様々な景色を徹底的に異化することで、大阪を知っているものでさえ、自分たちが通勤で通っている歩道はこんなに美しかったのかと思わせた。対して「マンハント」では、今現在の大阪を、まさにそのままにアクションの舞台にしている。いや、まさか上本町駅と近鉄電車を使ってあそこまでアクションできるとは思わなかったよ(,,゚Д゚) 無論、実際の大阪の土地配置とかを知っていればあり得ない動線だったりするところとかもあったりするけど、別にそれで物語の面白味が失われたりしない。
そして、物語がちゃんと今の時代にアップデートされている。なんで宣伝で大々的にいわなかったのかがわからないのだが、この映画の原作は、バイオレンス小説の巨匠、西村寿光の代表作「君よ憤怒の河を渡れ」。なもんで、物語の根幹はともかくディテールはやっぱり古びているはずだが、少なくとも現代のフィクションだと思えるくらいにはディテールをアップデートしていた。一番現代的に違和感があったのは、前半にあった「みんなで同じ振り付けで踊るダンスシーン」くらいか(少なくともクラブ全盛になってから、ハコの大小にかかわらず、客は踊るにしても何するにしても各自が勝手にするので、かつてのパラパラ流行時みたいなああいう感じにはならない。これは日本だけでなく全世界的な傾向)。
で、出演する女優陣が、みんな戦力になっていてカッコいい。どう見ても本作でのかわいい担当にしか見えない桜庭ななみ(福山雅治の部下役)でさえ、あからさまに足引っ張ったり(逃亡中の主人公の人質になるのも不意を突かれたので)せずに、警察側の戦力になっている。

でさあ。
確かに、資本は中国本土だし、監督はジョン・ウーで、脚本も中国人。だけど、原作はさっきも書いたように西村寿光。主役の片側は福山雅治で、それ以外にも重要な役に國村隼や竹中直人を起用していい演技をしている。おまけに、エンドロール見ていたら、スタントの大半が日本人。
ジョン・ウー節にあふれた作品であるんだけど。この映画、本当は日本映画界が作れなきゃいけないんじゃなかったろうか。Twitterみても「これ洋画? 邦画?」という感想が意外とあった。で、出演者が日本人だけど裏方が全部違うとかいうのならともかく、かなりのところまで日本人がやっている。特に、スタントなんて本当は自分たちが信頼できるスタッフを本土から連れてきていて全くおかしくないところで、日本人を多数起用している。なのに主導権は日本じゃなくて、でも「邦画?」といわれるレベルのローカライズができているし、しかもこれだけおもしろい。
「パシフィック・リム」や「ベイマックス」とは違った意味で、でも確実に、日本の映画製作のある部分が危機に面している、というか、もっとキツい言い方をすると、滅びようとしている。
これでコネクションなりを作った、優秀な制作陣のいくらかは、今度は中国映画の制作に招かれるだろう。その中でもさらに優秀な人たちは、高い評価を受けるだろうと思う。この映画にも出演した、倉田保昭のように。
で、我々はどうなるのか。そうだなぁ。今のハリウッド大作のように、金像賞のような賞とかでそういう優秀な人材が称されることに拍手を海の向こうから送り、現地よりもだいぶ遅い公開を待ちわびるようになるんだろうなぁ。幸い、世界中の映画を鑑賞する消費パワーはまだ日本には残っているようだし。

でも、映画はおもしろかった。雑かも知れないけど、アクション映画というのはこういうものだという教科書のような出来の映画だったと思う。洋画? 邦画? 香港映画? 中国映画?
「こまけーことはいーんだよー」(,,゚Д゚)

 

matuken について

A Japanese man. That's all :-D
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